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事業承継のご相談を受ける場合に「株主が誰なのか正確に分からない」というケースがよくあります。
会社の所有者は株主ですから、「株主が誰なのか」というのは「会社を今誰が所有しているか」という根本的な問題です。
このように重要な「株主が誰か」という問題ですが、実際に、どのようにして確認すればよいのでしょうか?
会社登記簿には株主が誰であるかという情報は記載されません。
ですから会社の登記情報を見るだけではその会社の株主構成はわからないわけです。
上場会社であれば株主名簿の作成は必ずされていますし、決算報告の際に株主名や所有株数を記載した有価証券報告書も作成されるため財務局や証券取引所で閲覧することも可能です。会社四季報に主な株主の記載もあるかと思います。
しかし上場していない中小企業の場合どうやったら会社の株主は調査できるでしょうか?
中小企業では株主の情報はできるだけ開示しないという方針を取っていることが多いかと思いますので、まず公表されることはないと考えていいでしょう。
会社法では株主名簿は作成保管義務があるので、それを見ることができれば株主が誰で何株持っているのかはわかりますが、問い合わせたとしても会社には株主又は債権者以外には開示義務がないのでおそらく拒否されるものと思います。
また、中小企業では株主名簿すら作成していないという場合も多々ありますので、問い合わせたとしてもそもそも正確な株主情報を会社が把握していないということもありえます。
会社の業績が非常に良ければ株式配当がありますので、株主の情報はきちんと把握したうえで配当すると思いますから、株主名簿は存在する可能性が高いでしょう。業績がよくなくて配当をしたことがないという場合、株主名簿も備えおきがないかもしれません。
特に昭和の時代に創業したような会社の場合、当時は株式会社を作るのに発起人が7名必要でしたから、名前だけを知人から借りて会社を設立することもよくありました。
その場合、書類上は株主となっているけれども実態としては会社を支配していた人が資本金を出していたのであって、実質的な株主と帳簿上の株主が異なることもよくありました。
株主が死亡し相続が発生すると、相続人が株式を引き継ぎますが、そもそも会社設立の時に名前だけ株主になったような人は自分が株主であると認識していませんから、その相続人となればますます株を引き継いだという認識もないでしょう。
そのようにして年月が経過していったとき、当時の状況を知る人がいなくなってしまえばいったいだれが株主なのかわからなくなってしまいます。
実はこのように株主が誰であるのか証明がつかない会社は多々あるのです。
M&Aなどで会社を売買するときには株主が誰であるのかを確定しなければ、正式な株主総会も開けませんし、売買の決議をとることができません。ですから、株主の確定はとても重要なことであるにもかかわらず、調査が困難であるケースがあります。
原始定款があれば、定款に株主の記載がありますからその株主が実質的に株主であったのか問い合わせたり、相続が発生しているのか株式譲渡をしたのかなど、親族に問い合わせるなどして調査することになります。
しかし、会社と何の関係もない第三者が会社の株主情報を調査することは会社の承諾がない限りできないことです。
私たちが取り組むM&Aのデューデリジェンスにおいては、売主となる会社の承諾を得てこのような株主情報を調査したり、負債や資産をみて株式の価値算定を行っていきます。
上に述べたように、そもそも株主名簿その他の記録が整備されていないケースでは完全な情報を得られない場合もありますが、調査を尽くすことによって可能な限り、元の株主が誰であったか、そこからいつ、誰に何株移転していったかを追跡することにより、株主構成を明らかにし、事業承継が可能になるよう条件を整えていくことになります。